
文化庁の補助金により独立行政法人日本芸術文化振興会に令和5年度に設置された「文化芸術活動基盤強化基金」において、グローバルに活躍できる人材を育成する「クリエイター等育成プログラム」。本プログラムでは、次代を担う若手クリエイター等の人材育成を目的に、海外展開に向けた指導・助言、海外フェスティバル等への派遣や出品、現地関係先とのネットワーク形成の促進、サポート等を行います。本育成プログラムの映画分野は「Film Frontier (フィルム・フロンティア)」の傘のもと3つのプログラム(1.海外渡航プログラム、2.長編アニメクリエイター支援、3.滞在型企画開発)を実行しています。
そのうちの「海外渡航プログラム2期」の育成対象者5名が決定しました。
11/2(日)に開催された育成対象者発表会では、1期の選抜者である中西 舞監督、滞在型企画開発の山下つぼみ監督が登壇、これまでの活動を報告しました。その後、ゲストとして登場したクリスチャン・ジュンヌ氏(カンヌ国際映画祭代表補佐兼映画部門ディレクター)、選考委員の一人でもある石川慶監督、東京国際映画祭プログラミングディレクターであり、「フィルム・フロンティア」実写プログラム統括アドバイザーの市山尚三による、クロストークを経て、市山尚三氏より2期の選抜者となる5名を発表しました。
市山は、「今回も非常にレベルの高い応募が揃い、選考は本当に苦労した。実現性の高い企画を選んだつもりなので、来年からすぐにでも動いてほしい」とコメント。石川慶監督からは「監督として実現性というより純粋に企画の素晴らしさを重視した。皆さんしか作り得ない独自性の高い企画揃いです。自分にとっても次回作のライバルになると思う。いい作品を作ってください」と熱いエールが送られました。
選抜された5名のクリエイターからは、このプログラムに参加する意気込みが下記のように語られました。

金子監督 : 映画製作の企画段階において資金集めが困難な中、そこも含めて伴走してもらえることがありがたい。作品を撮りたいという多くの新人監督の中で選ばれたので、充実した無駄のない期間にしたいと思います。
たかはし監督 : 12年くらい前から東ヨーロッパ、セルビアで作品を作りたいと思っていた。今回企画として拾っていただき、大きな一歩となったことは大変光栄です。
藤元監督 :『ロストランド』が東京国際映画祭でも上映中であるこの時期に、次の企画の補助を受けられることを、大変嬉しく思います。
吉原プロデューサー : 企画の面白さを評価してもらえたと聞き、在日というテーマで開発を進められることを嬉しく思います。
草野監督 : まだ実績の少ない私ですが、次の作品はリサーチが重要になるので、撮影の前に準備に時間をかけられることを嬉しく思います。(ビデオメッセージ)
※すでに今年10月からは、英語によるピッチングトレーニングの他、海外マーケット参加に向けた育成、支援プログラムが開始されています。

「フィルム・フロンティア」
海外渡航プログラム
◾️選考基準、選考方法
・応募企画・・・内容・企画力(プロデューサー)/作家性独自性(監督、脚本家)、実現可能性、海外展開可能性
・応募者の意欲・将来性・・・海外展開に対する意欲、目的の明確さ、将来性
・支出計画の妥当性、実現可能性
・実施スケジュールの妥当性、実現可能性
・実績
以上の観点から各選考委員が採点したうえで、選考委員会を実施し総合的に判断した。
◾️選考委員
石川慶(映画監督)
市山尚三(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター、映画プロデューサー)
金原由佳(映画ジャーナリスト)
想田和弘(映画監督)
福間美由紀(映画プロデューサー)
◾️育成対象者
金子由里奈(映画監督)
1995年、東京生まれ。立命館大学映像学部卒業。 2018年『21世紀の女の子』で公募枠に選ばれ『projection』を監督。 翌年には短篇映画『散歩する植物』がぴあフィルムフェスティバル2019に入選。23 年には『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』で長編商業デビュー。同作は、数々の国内新人賞を受賞。第25 回上海国際映画祭アジア新人部門にも選出された。幽霊、石、植物など、非人間的なものをテー マに、映像作家だけでなく、劇作家、音楽作り、文筆家など幅広く活動中。
草野なつか(映画作家、脚本家)
1985年生まれ、神奈川県出身。映画作家、脚本家。東海大学文学部文芸創作学科卒業、映画美学校12期フィクション・コース修了。2014年『螺旋銀河』で長編映画を初監督。長編監督2作目となる『王国(あるいはその家について)』(2018)はロッテルダム国際映画祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭などで上映されたほか、英ガーディアン紙・英国映画協会〈BFI〉による年間ベスト作品に選出されている。
たかはしそうた(映画監督)
1991年、横浜生まれ。メルボルンにあるSandringham Collegeを卒業後、東京造形大学映画専攻領域へ入学。卒業後5年程イベント制作会社社員として働きながら映画の自主制作を続ける。その後、東京芸術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域に進学。2023年修了。2023年、自主製作映画『上飯田の話』を劇場公開。同年、大学院の修了制作として監督した『移動する記憶装置展』がPFFアワード2023にて観客賞を受賞。2025年、ndjc:若手映画作家育成プロジェクトにて『あて所に尋ねあたりません』を監督。プラムからできるラキヤを好む。
藤元明緒 (映画作家)
1988年、大阪府生まれ。ビジュアルアーツ専門学校大阪で映画制作を学ぶ。在日ミャンマー人家族を描く初長編『僕の帰る場所』(2018年)が第30回東京国際映画祭アジアの未来部門 作品賞&国際交流基金アジアセンター特別賞を受賞。2021年、ベトナム人技能実習生を描く長編第二作『海辺の彼女たち(日本ベトナム国際共同製作)』を公開。同作品はPFF第3回「大島渚賞」、2021年度「新藤兼人賞」金賞、第13回TAMA映画賞最優秀新進監督賞、第31回日本映画批評家大賞・新人監督賞、大島渚賞などを受賞。ロヒンギャ難民を題材にした最新作『ロストランド』が第82回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で審査員特別賞を受賞。2026年春全国公開。
吉原裕幸(プロデューサー)
東京生まれ。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、株式会社 TBS スパークルにて映画プロデュースに携わる。『三島由紀夫 vs 東大全共闘 50年目の真実』(ギャガ)、『糸』(東宝)、『樹海村』(東映)などに参加。その後、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻プロデュース領域に入学とともにクラウドイレブンスタジオ株式会社を設立。日韓合作短編映画『国道 7 号線』、日韓合作長編映画『3 ミリの恋』(ともに全辰隆監督)、日本・台湾・ポーランド合作『Good Death』(舩橋淳監督)など、国際共同製作映画を製作中。『国道 7 号線』は釡山国際短編映画際観客賞など、数多くの映画祭で入選・受賞。
問い合わせ:公益財団法人ユニジャパン 国際支援 office@unijapan.org TEL 03-6226-3022


