参加者:早川千絵(映画監督)、水野詠子(映画プロデューサー)
期間:2026年7月6日~7月9日(4日間)
場所:フランス・Villa Valmont(ヴィラ・ヴァルモン)
2026年7月6日から9日にかけて、フランスのVilla Valmontにて、長編映画の企画開発ワークショップ「Full Circle Lab(以下、FCL)」が開催された。従来はフランスとドイツの映画企画に限定されていたが、今年から初の試みとして、スロベニアと日本を加えたインターナショナルな枠組みへと拡張された。日本からは、早川千絵監督が企画中の新作を携え、水野プロデューサーとともに参加した。
■ 映画と向き合うVilla Valmontでの創作環境
会場となったVilla Valmontは、豊かな自然に囲まれた静寂な環境に位置する施設である。都会の喧騒を離れ、映画のことだけに集中できる環境は、クリエイティブな活動を進める上で非常に理想的であった。また、ほぼすべての食事を参加者全員で共にするプログラム設計になっていたことで、国境を越えて自然と密な交流が深まり、期間全体を通して非常に穏やかで良い協力関係が醸成された。

■ 問いかけと「余白」から生まれた新たな気づき
グループセッションでは、具体的なアドバイスを受けるだけでなく、講師からの問いかけに答えながら、自ら企画を掘り下げていくアプローチが重視された。特に印象に残ったのは、「この映画を見終わった観客に、どのような気持ちになってほしいか」という問いかけだった。トリートメントを読むだけでは、物語がぷっつりと終わってしまうように感じるという意見もあり、結末に向けて観客の感情をどのように導いていくのかが、この企画における重要なポイントだと気づいた。
また、過度にスケジュールが詰め込まれておらず、適度な「余白」が用意されていた点も、本ワークショップの大きな利点だった。セッションの合間には、得られた多角的な視点を水野プロデューサーとじっくり検討・整理し、密度の高いブレインストーミングを行う時間を十分に確保できた。その結果、一人では思いつかなかったような新たな展開のアイデアも生まれ、企画をさらに深めることができた。

■ 多国籍な映画人との対話から得た新たな視点
参加者同士がお互いの脚本を分析し意見を交わし合う相互フィードバックセッションが行われた。事前に相手の企画を読み、建設的な意見を考える作業は、自身の企画を多角的に見つめ直す有意義な機会となった。
また、世界観やイメージが直感的に伝わったチームと、論理的整合性を厳密に問うチームとで、文化的背景や思考ロジックの違いによる解釈の差が明確に現れた。感性や受け止め方の違いをダイレクトに検証できたことは、重要な学びとなった。
■ 最終ピッチで確かめたストーリーの伝わり方
最終日には、10分間で作品のストーリー展開のみを伝えるピッチが行われた。4日間で全参加者の企画が驚くほどブラッシュアップされており、大きな刺激を受けた。自身のピッチにおいても、物語の流れや構成がより明確に提示され、聞き手にその世界観が確かに伝わるなど、大きな手応えを得る機会となった。

■ 国際共同制作に向けた新たな一歩
この4日間を通じて、開発中の企画と自身の映画作りの方向性に確かな自信を深めることができた。ストーリーの構造を改めて整理することで、海外を舞台とした映画制作に対する迷いも大きく解消され、今後の作品づくりに向けた視野が一層広がった。
また、参加したプロデューサーたちとの具体的な情報交換を通じて、各国における公的助成金制度や国際共同制作の実際のプロセスについても理解を深めることができた。
今回のFCLへの参加は、映画企画そのものをブラッシュアップするだけでなく、自身の作品を国際的な視点から捉え直し、海外の映画人と協働していく可能性を実感する機会となった。今後の企画開発と国際共同制作に向けた、確かな足がかりを得ることができた4日間だった。


