パリ・レジデンス滞在レポート
参加監督:早川千絵
滞在期間:2025年8月6日~28日
滞在地:フランス・パリ
2025年8月上旬から8月下旬にかけて、パリを拠点としたレジデンスプログラムを実施した。本レジデンスでは、企画開発中の長編作品を中心に、プロデューサー、脚本アドバイザー、俳優、研究者など多様な分野の関係者と意見交換を行い、国際的な視点から企画内容を検証・深化させることを目的とした。
日本とフランスをつなぐ映画制作の現場から
日本人監督との共同制作実績を多く持つフランスの制作会社を訪問し話を伺った。日本人監督作品を継続的に制作する背景や、フランスにおける日本人監督作品の受容状況、日本映画に対する関心の現状と今後の可能性について、実務経験に基づく意見を共有いただいた。日本とフランスの映画制作環境や文化的背景の違いと共通点を整理する機会となった。
メンターとの対話を通じた企画開発
本レジデンスの中心的な取り組みとして、スクリプトアドバイザーのAnna Cinnik氏との継続的なセッションを行った。8月9日のオンラインセッションを皮切りに、企画の方向性や構造について意見交換を重ね、課題設定と検討を段階的に進めた。
8月12日にはパリにて対面セッションを実施し、サンマルタン運河周辺を歩きながらディスカッションを行った。屋外環境での対話により、企画の新たな視点や構造的な整理が進み、作品の軸となる要素がより明確になった。

映画関係者との意見交換とネットワーク形成
滞在期間中には、『PLAN 75』のプロデューサーであるMaeva Savinien氏、『ルノワール』編集のAnne Klotz氏、プロデューサーのChristophe Bruncher氏など、これまでの制作活動を通じて関係のあった映画関係者と再会し、近況報告や今後の共同の可能性について意見交換を行った。国境を越えた制作動向に触れることで、国際共同制作に対する理解を深める機会となった。
映画上映および観客との交流
8月12日には、UGC Ciné Cité Les Hallesにて『RENOIR』の先行プレミア上映が実施され、上映後にQ&Aを行った。バカンスシーズンである8月の開催であったが、約200席がほぼ満席となり、観客から直接反応を得ることができた。その後もKINOTAYO映画祭や、MK2、Montreuilの映画館などで先行上映およびQ&Aを実施し、フランスの観客との対話を重ねた。

俳優とのアクティングセッション
8月18日には、現地在住の俳優2名とアクティングセッションを実施した。日本で行っている俳優ワークショップの手法を取り入れ、場面を即興で演じてもらうことで、言語や文化の違いを越えた演出の可能性を検証した。本セッションは、今後の演出方針を検討する上で重要な示唆を得る機会となった。
総括
当初は、滞在期間中に脚本初稿の完成を目標としていたが、実際には対話やリサーチを重視した企画開発中心のレジデンスとなった。スクリプトアドバイザーとの継続的な意見交換や、俳優との即興セッションを通じ、企画初期段階における十分な検討の重要性を再認識した。
VIPOおよびPop Up Film Residencyによる柔軟なサポート体制のもと、状況に応じたスケジュール調整が可能であったことも、本レジデンスを円滑に進める上で大きな支えとなった。本滞在は、今後の企画開発を進めるための基盤を固める、意義のある機会であった。

